避けるべき素材
黒染め処理は全ての金属に適用できるわけではないため、処理に適さない素材をしっかりと把握しておく必要があります。処理効果が得られにくい、もしくは処理そのものができない素材について解説していきましょう。
ステンレス鋼は黒染め処理が最も困難な金属の一つです。表面に形成される不動態被膜が化学反応を阻害するため、通常の黒染め処理では均一な黒色を得ることができません。
アルミニウムや銅、真鍮などの非鉄金属も黒染め処理には適していません。これらの金属では、鉄鋼材料で生じる酸化反応と異なる化学反応が起こるため、目的とする黒色被膜を形成することができないのです。
メッキ処理された金属部品も避けるべき素材となります。クロムメッキや亜鉛メッキなどの表面処理が施されていると、黒染め液が素地に到達できず、適切な反応が得られません。
また、以下のような状態の金属も処理に適していません。
- 表面に油分や汚れが付着している素材
- 過度の錆が発生している部分
- 溶接部周辺の熱影響部
- 表面粗さが著しく不均一な箇所

さらに、プラスチックや複合材料などの非金属材料はもちろんのこと、金属であっても表面に特殊なコーティングが施されている場合は処理ができません。
このように、黒染め処理には素材の制約が存在するため、製品設計の段階で処理可能な材料を選定することが重要になってきます。不適切な素材に処理を施すと、むらや変色などの品質不良が発生する可能性が高くなるでしょう。